不動産鑑定

尖閣諸島と不動産鑑定士

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先日、東京都が尖閣諸島の購入に向けて調査を始めたというニュースが流れました。

その際に不動産鑑定士が同行したということで、業界でも話題になりました。

世間一般には、このときのニュースで初めて「不動産鑑定士」という名前を聞いた人も少なく無いかと思われます。

業界では、どこの不動産鑑定士が担当するのか?どうやって評価するのか?報酬はいくらなのか?という話が中心となっていました。

担当する不動産鑑定士や、報酬についてはすぐに情報にたどり着きましたが、問題はどうやって評価するかです。

通常であれば、取引の事例を参考にして評価しますが、このような特殊な事情を抱えた離れ小島の取引事例など、有るはずもありません。従って、類似性のある取引から、理論づけて追っていくことになるのでしょう。

さて、いくらくらいになるのでしょう?

と思っていたら、直後に政府が20.5億円で買い取ることで地権者と合意したという続報です。本当に合意したのか?そして果たして、その金額は妥当なのか?

東京都の調査からわずか2日程度の話で、その間に鑑定評価をしたとはおよそ考えられません。もちろん売買金額は自由に決められますが、これだけ面積が広いと、国土利用計画法の対象となります。まあ、判断するのは行政ですから、何とでもなりますけどね。

ニュースによれば、5億円くらいかと思っていたが、東京都への寄付金が14億円あったと言うことで、そう決めたんだとか。ということで、20.5億円については、根拠は無いようです。

では、5億円というのは?

多分、固定資産税評価額から計算したのではないかと推定されます。

 

じゃあ、いくらくらいが妥当なのか?という事で、試しに評価してみたいと思います。

当然、現地調査はしていないので、全く外れの評価になるかもしれませんが、遊びと思ってください。

今回の売買対象は、魚釣島、南小島、北小島の3島で、面積はそれぞれ、3,641,983㎡、324,628㎡、258,842㎡となっています。(Wikipediaより)

規準となる価格ですが、地理的に一番近いと思われる与那国島には、地価公示標準地は有りませんが、都道府県地価調査地が2箇所有ります。そのうちの安い方、基準地番号「与那国(県)-2」の平成23年7月の価格(平成24年は未発表)は4,500円/㎡となっています。但しこれは、宅地の価格であり、対象の島々に宅地は無く、ほとんどが原野ですから、このまま乗ずるわけにはいきません。この地価調査価格をどういう風に補正していくかが価格の決め手になっていきます。

このためには、付近における宅地と原野との価格比がどうなっているかという資料が重要なのですが、これも手に入れようがありません。(相当な時間を掛ければできるかもしれませんが、そこまでやっていられません。)

また同じ原野でも、本当にどうにもならない原野もあれば、宅地化ができそうな原野もあるため、それによっても価格比が異なってきますし、個別的な要因にも絡んできます。

また、この小さな島に対して標高が高い部分が有るので、かなり急峻な部分もあると推測できます。写真を見ても、何となく想像が付きます。

そして、交通の便。与那国島なら空港があり、問題なく人が行くことができますが、対象の島々には、船着き場さえありません。当然、電気、水道などのインフラはありません。わき水があるから、人が住めるだろうという程度です。

もう一つ参考になるのは、同じく都道府県地価調査で発表される林地の価格です。

沖縄県では4地点発表されていますが、いずれも沖縄本島です。その中で一番市街地から離れた地点は「沖縄(林)20-1」の国頭村字奥間にある標準地ですが、121,000円/a=121円/㎡です。この価格についても、上記と同様の補正が必要となります。

 

更に参考となりそうな指標を見てみましょう。

実は離島と言うことでは、東京都の小笠原村にも価格指標があります。

宅地で言うと、都道府県地価調査「小笠原(都)-4」、母島の12,100円/㎡です。

林地で言うと、都道府県地価調査「小笠原(林)20-11」の母島字庚申塚で、950,000円/a=950円/㎡です。

意外と高い水準ですね。これらのポイントを規準とするのは難しいようです。

 

さて、ではどう考えるかですが、遊びですから、達観でやってみたいとおもいます。

単純に原野の価格でいうなら、与那国の宅地から考えると、原野の価格比は宅地の5%とし、更に交通条件を考慮し、山や砂浜があることやらを考えて、その25%くらいとすると、56円/㎡。

国頭村の山林価格からすると、その半分くらいのような気がするので、61円/㎡。

何となく、似たような価格となりました。計算を簡単にするために結論として60円/㎡とすると、魚釣島 218,518,980円、南小島 19,477,680円、北小島 15,530,520円となり、合計で253,527,180円となりました。

高いのか、安いのか?

更に、これに国防上の重要性とか、いろいろな要素が加わってくることでしょう。

繰り返しますが、あくまで遊びで試算しており、算定根拠は非常に薄く、自分でもこれが正しいのかどうかわかりません。

ちなみに、対象の島々は国が一括で借り上げており、その賃借料は年間2,400万円だということ。収益物件として考えると利回りは9.5%となりますから、固定資産税以外に、メンテナンスその他一切費用がかからないとすれば、なかなか魅力的な物件という事になります。

逆に利回りを5%として割り戻した場合、収益価格は490,000,000円となります。

採用する利回りの設定については、議論百出となりますが、これが政府の言っていた「5億円くらい」という根拠なのかもしれません。

 

さて、今後この問題がどう推移していくのかわかりませんが、自分の関心は、作業途中で中止となりそうな鑑定評価、報酬はいくらもらえるのだろう?と言うところです・・・。

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