不動産鑑定

市場価格と競売価格

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時々こんな会話をします。
「最近、あの分譲地は相場が安くなった。」
そうなんですか?
「うん、安い取引がたくさんあるんだよ。○○円くらいの。」
それは随分安いですね。何ででしょう?
「だいたいが競売だね。」
それは・・・。
確かに相場と言うものは、取引事例がいくつかあって形成されるものです。
しかしあくまでも、正常な状態での取引であることが前提です。
不動産鑑定評価においては、「正常価格」といい、「市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値・・・」となっています。そしてそれを満たす条件としては、
1.市場参加者が自由意思に基づいて市場に参加すること
2.売り急ぎ、買い進み等をもたらす特別な事情がないこと
3.対象不動産が相当の期間市場に公開されていること
等々が挙げられています。(話を簡略化するため、正確な記載になっていないことをご了承願います)
簡単にいえば、ある人が不動産を売る場合に、不動産業者に仲介を依頼し、不動産業者が広告やインターネットで市場に公開し、売れるまでの間営業活動をして、買う人が現れて契約、売買というごく普通の取引を想定しているわけです。
一方競売は、民事執行法に基づいて、所有者の意志に基づかず強制的に不動産を競り売りの方法で売却し、お金に換える制度です。という事は、1.の自由意思に基づいて、というのは該当しないことになります。
売らせる方(お金を貸しているまたは請求している債権者)は、早くお金に換えたいのですから、2.の売り急ぎという特別な事情が発生することになります。
そして入札期間の2週間前に情報が公開され、1週間の入札期間を経て売却が決定されます。ですから、買う人は遅くとも3週間以内に買うか買わないか、いくらなら買うのか、という意思決定をしなければならないのですから、3.にも該当しません。
更に競売の場合、所有者は売りたくないのですから、所有者の協力は得られません。住宅の場合、住んでいることがほとんどですが、家の中を見せてもらうことはほとんどの場合出来ません。評価は我々不動産鑑定士がすることがほとんどで、その場合は裁判所の命令によって中を見ることが出来ますが、やはり必ずしも所有者が協力的とは限りませんし、中には夜逃げや所有者が既に死亡している場合もあり、住んでいる人だけが知り得る情報(例えば、下水管がしょっちゅう詰まるとか)を得られないこともあります。
従って、競売物件はリスクがあるという事から、評価額は市場性減価をした価格となります。競売市場性減価は、地裁や物件の種類ごとに異なりますが、宇宮地方裁判所管内では、住宅については60/100です。
その後競り売りになるわけですが、競り売りとは英語で言えばAuction(オークション)ですから、安い価格から競り上がっていく売却形式だということはご存じだと思います。
こうして解説すると、競売価格というのは正常な市場価格とは違うというのがおわかり頂けますね。ですから、競売で不動産が売れたからと言って、相場が下がったと判断するのは早計だということです。
但し、バブル時にたくさん売れた住宅団地などにおいては、その後の経済情勢の悪化により、競売物件が立て続けに出てくるという現象がおこります。これは、金融機関が一時期住宅ローンに注力し、無理なオーバーローンを組ませて破綻の片棒担ぎをしていたという裏事情もあります(それが国の政策だったからという人も居ますが)。
すると、一般の人や、不動産業者ですらその取引の実態を分析せず、それが正常な価格だと思い込み、相場の低下を引き起こす事があるというのも事実です。
一般の人からすれば、不動産取引は日常的にするものでは無く、いきなり相場と言ってもわからないでしょう。迷ったら、信頼できる専門家にご相談ください。

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