不動産鑑定

損をしない賃貸物件の借り方

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賃貸アパート、マンションを借りる時には、仲介手数料の他に「敷金」「保証金」「礼金」といったお金が取られることが一般的です。
一般的に「礼金」というと、お金は返ってきません。一時金であり、権利金だという概念も有りますが、払う方からしたら家賃の一部です。
「保証金」「敷金」というものは、原則預り金として、退去時には返ってくるものと考えられています。契約によっては、原状回復費用を差し引かれることもあります。また関西の方では、「敷引き」といって、最初から一部を償却してしまうシステムも有るようです。
不動産鑑定の世界では、投資の概念が有るため、これらの一時金と賃料を含めて、貸主が受け取るすべての経済対価である「総収益」を算定します。
賃料は当然収入になるにしても、一時金はどう見るのかというと、まず敷金は、預かったお金を運用することを前提として、その運用益を収入に含めます。運用方法には、預金を始め、国債・株式その他いろいろ有りますが、長期トレンドを考えるため、昔から運用の利回りは5%とされてきました。しかし昨今の低金利状況を反映して、ここ数年は3%の利回りで算定するのが一般的となってきました。
一方、礼金は最終的に償却してしまうので、賃貸期間と運用利回りに応じた年賦償還率を掛けたものを収入に計上します。運用利回りは、敷金と一緒ですが、運用期間、つまり入居者が賃貸する期間は、居宅の場合2年、事業系の場合は3年としています。これは一般的な賃貸借契約での賃貸期間と一致します。
損をしない借り方はどうしたらいいのか?
そこで、いくつかのシミュレーションをしてみましょう。
月額7万円のアパートを借りるとします。
1年間に支払う家賃の合計は
7万円×12ヶ月=84万円です。
礼金を2カ月分支払った場合で、2年間住んだ場合は、年賦償還率が0.5226(運用利回り3%の場合)となるので、初年度の月額家賃は76,097円となります。
これが4年間住んだ場合には、73,138円、10年間住んだ場合には71,367円となりますから、長く住んだほうが、1カ月当たりの家賃は少なくなるので、お得な感じがします。
しかし、払うものは変わらないので、気分的に得しただけになります。
ここで着目するのは、先ほどの敷金、礼金の額です。
栃木県のエリアでは、アパートの賃貸条件は
① 敷金2カ月・礼金1カ月
② 敷金1カ月・礼金1カ月
③ 敷金1カ月・礼金無し
④ 敷金無し・礼金1カ月
の、おおよそ4パターンになっています。中には敷金・礼金無し!というところもあります。以前は敷金・礼金とも2カ月というところが多かったのですが、アパートがあちこちに建てられて、供給過剰となり、競争が激しくなるにつれて一時金の条件が下がってきました。そのほうが借りやすいからです。
オーナー側からすると、一時金が払えない人は基本的にお金がなく、滞納をする可能性も高く、リスクがあるので入居に消極的なのですが、空室でいるより少しでも家賃を貰ったほうがまし、ということになります。
7万円の家賃だけ支払うと、年額84万円というのは先ほど試算しました。
どうせ一時金を払うのであれば、返ってこない礼金は安いほうがいいですし、敷金についても、他に使えることを考えれば、安いほうがいいわけです。損をしないためには、一時金を払う代わりに、月額賃料を安くしてもらうのが一番の方法です。逆に言うと、年間84万円以内にするには、月額賃料がいくらならいいのか?ということになります。
想定は運用利回りが3%、居住期間は4年としてみます。
結論は、
① 68,130円
② 68,290円
③ 69,820円
④ 68,460円
ということになります。
やはり礼金を払ったほうが、月額は安くなる傾向にあります。このくらいの家賃では、敷金が1カ月変わったところで(①と②の差額)、月額に直すと160円程度しか違いません。
オーナー側からすると、それぞれの条件ならこの家賃をもらうならペイするという事になります。
では、なぜ敷金・礼金をとるのでしょうか?
まず、一時金を取ることによって、上記の通り、月額家賃は安くなりますから、単純に募集しやすくなる事は言えます。しかしもっと大きい理由は、先ほども言ったとおり、賃借人のリスクを回避することです。一時金を払えない人は、滞納する可能性が高いという事もありますが、仮に一時金を預かっておけば、滞納が発生してもそれに充当できるし、汚損された場合にも相殺できるという事があるからです。
いずれにしても、不動産を借りる場合には、見せかけの家賃だけでなく、条件についても気にすることが必要だということです。

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