不動産鑑定

固定資産税評価額を遺産の評価にするとトラブルが。

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こんな表題だと、「固定資産税評価額を計算の基礎にするのは、財産評価基準で決まっているじゃないか」という反論を受けそうです。たしかに国税庁のホームページを見ても、土地の評価方法のうちの倍率方式や、建物の評価は固定資産税評価額に倍率を乗じて計算すると書いてあります。しかし、大元をたどれば、財産は「時価」で評価すると書いてあります。固定資産税評価額は、課税のための一律な時価であって、対象物件そのものの本当の時価ではありません。この辺の話は、以前にも書いているので、詳細は割愛します。

ある遺産分割でもめたケースですが、相続財産は築50年になろうとする農家住宅や納屋と約800坪のその敷地、周りの畑、そして数十万円の預金だけでした。しかし固定資産税評価額は約2500万円。相続人は子供5人。だから一人当たり法定相続分の500万円をもらう権利があると主張する弟や妹。一方、長男が家を継ぐべきだからと言って、ハンコ代の100万円だけで了解した姉。問題の中心となった長男は現金や預金をそんなに持っているわけではなく、それぞれに500万円なんて払えないといいます。弁護士は、亡くなったおじいちゃんの入院施設費や、世話にかかった費用(これらを寄与分といいます)で相殺しようと、配分を減らした案を出しますが、弟、妹たちは、そんなのはおじいちゃんの年金で払えたはずだから認められない(とても払える額の年金はもらっていないのですが)といって納得しません。こうして寄与分や特別受益(おじいちゃんが生きてるうちに相続人がもらったもの)の話になると、感情的な部分も出てきて、もう泥沼です。しかしこのまま固定資産税評価額を財産額として話が進めば、裁判になった場合、長男は法定相続分、つまり読んで字のごとく、法律で定められた500万円を弟、妹たちに支払わねばならなくなりますもともと仲は悪くなかったのに、どうしてこうなってしまったのでしょうか?

元々、弟や妹たちは、畑に囲まれた田舎のボロ家(失礼ながら)と宅地が、そんなに価値があると思っていませんでした。ところが弁護士が入って財産額を知り、且つそれぞれ500万円ずつもらう権利があると聞いたとたん、人が変わってしまったのです。これは、弁護士さんの失敗でもあります。

問題は、遺産の評価を固定資産税評価額を基準に考えてしまったところにあります。相続財産が適正に評価されていないのです。まず築50年の農家住宅や納屋が、固定資産税評価額では400万円の評価になっていましたが、自分が写真などで確認したところとてもそんな価値があるようには見えませんでした。むしろほぼ無価値に近いと思われました。次に宅地部分。800坪といえばかなり広いですが、その評価が2000万円。しかし地形はかなり悪く、敷地の中に水路や池があったりして、不動産鑑定をした場合、とてもそんな価格は付きそうにありません。

仮に不動産鑑定評価をして、土地建物の評価が1/2になったらどうなるでしょうか?(極端な話のようですが、過去にはそういう評価をしたことが少なくありません)

相続人がもらえるのはそれぞれ250万円ずつになり、これなら支払える可能性が出てきます。そうなれば、寄与分や特別受益の話でもめることはありません。

不動産鑑定評価をもめた後で提示して、一度気持ちが舞い上がっている弟や妹たちが、すぐに理屈で納得するかはわかりません。時間をかけて説得するしかありませんが、裁判になっても説得力のある証拠となります。

不動産鑑定は費用が数十万円かかるから、と言って利用しないことが少なくないようですが、費用対効果を考えたら、使わないほうがもったいないと思います。

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